Sunday, April 1, 2012

No. 93: 細分化をともなわない選択と集中は危険 (April 2, 2012)

Management:
エルピーダメモリの破綻や、日本が世界に誇る大手家電メーカーの業績の悪化と立て続けに暗いニュースが報道され、行き過ぎた選択と集中が原因だという意見が主流になっている。しかし、家電大手の悲惨な業績は、選択と集中の戦略が間違っているのではなく、ビジネスの動向を見きわめて、市場、製品、対象とする顧客を細分化して、選択と集中の戦略を構築しないと、価格競争に巻き込まれる可能性が高く、大きな痛手を負うことを教えている。それをいち早く認識して、自社の強みを活かせるビジネスに特化した日立は、業績を大幅に改善させている。

同様なことがエルピーダメモリにも言える。得意先を、旧電電グループ企業の枠組みから超越することができず、ひたすら高性能で高品質の製品をより安く製造することに経営資源を投入した。半導体や家電製品のように、かなりの程度まで、コモデティ化がすすんだ商品は、選択と集中を追及して、大きな投資でコストを下げ、さらに良い品質を市場に出すという戦略だと、グローバル市場で苦戦するのが目に見えている。どんなにがんばっても、驚くほど安い人件費で、ものづくりをする国と戦っても、絶対に勝ち目はない。しかも、情報は瞬時に世界をかけめぐる。

高性能で高品質な商品を安く提供すれば、お客さまは喜んでくれるので、きっとよく売れるだろうと考えるのは、日本を中心にしてグローバル市場をみる、まったくの天動説。グローバル市場は、日本を中心に回っているのではない。サムソンが実行しているように、世界各地に営業員を駐在させて、現地顧客の要望を地道に取り上げる努力が不可欠である。その努力がサムソンの飛躍を可能にしたのである。円高は、家電メーカーの業績悪化の一要因に過ぎない。

さらに、市場を細分化して、企業に相応しいかどうかを精査する努力が必要である。選択と集中で、経営の行き詰ったコダックの例が、このことを示している。プリンターの市場は、コダックのような大企業がビジネスをするには、小さすぎる。企業規模に比して、小さい市場に参入しても、うまくはいかない。もちろん、大きすぎる市場に参入しても、うまくはいかない。「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」という例えのように、自社の力を見きわめて市場を創造し、参入することが重要である。

現在の厳しいビジネス環境でも、アイリスオーヤマ小林製薬は、業績を大きく伸ばしている。これらの優良企業の経営の視点は、どのようにしたら過当競争から逃れることができるかである。つまり、事業領域を単なる製造業や製薬業ととらえずに、「これがあればいいな」という視点でビジネスをとらえている。事業領域を、このようにとらえることが必要な時代になっている。せっかく「C&C」(Computer and Communication)という事業領域で一時代を築いたNECが、それに続く素晴らしい事業領域を構築できずに、業績を悪化させている。ビジネスのグローバル化がすすむ今日では、「家電製造業」という事業領域では、業績の悪化は避けらない。

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