Sunday, September 30, 2012

No. 101: ビジネスは小さく考えるほど、強固になる (October 1, 2012)

Management:
テーマ特化型交流サイトの人気が急上昇している。料理、旅行、ペットといった趣味性の強い分野を題材にしたサイトは、多くの利用者を集めている。交流サイトという市場も、また細分化されていくという事実を意味している。

ビジネスは小さく考えるほど、強固なビジネスになり、高収益構造の構築が容易になる。パナソニックの企業力をもってしても、「家まるごと」という戦略はうまくいかなかった。これだけ、技術が高度化し、技術革新のスピードが速いと、カバーする領域が広いほど、技術革新についていくのは難しい。

コングロマリットというビジネスコンセプトがある。日本語で複合企業と訳されて、もてはやされた時期があった。様々な企業を集めて、複数の企業で、景気の変動によるリスクを補いながら、全体として企業規模を大きくするというアイデアであるが、理想どおりうまくいっている例は少ない。GEも、コングロマリットという言葉を使用しないで、multibusiness company という言葉を使用している。

グローバル競争の時代には、吸収合併は不可欠である。しかし、事業形態の違う企業を吸収あるいは合併すると、自社に組み入れた企業数が増えるにつれて、それを経営して全体最適を求めるのは、加速度的に難しくなる。

No. 100: 環境に適応する能力が必要不可欠 (October 1, 2012)

Management:
どのような企業でも、業績を直線的に増加させることは不可能である。事業部門別や商品別でも同様なことが言える。競争相手がある以上、これは必然的に起こることである。業績が停滞する、あるいは、低下するのは、どこかに問題が発生していることを意味する。そこで、会議を開き、問題解決に向けての議論をすることになる。そして、問題の原因は見つかるけれども、どのように解決するかについて、意見がまとまらず、延々と時間を費やして議論する。

IBMの創始者であるトーマス・ワトソンの子息で、IBMを偉大な企業にしたトーマス・ワトソン・ジュニアは、コンピュータの将来性をいち早く見抜いた歴史に残る優れた経営者である。彼は、問題を発見したら(1)直ちに解決せよ、(2)正誤にとらわれず、とにかく答えを出せ、(3)もし、出した答えが間違っていたら、問題は再び戻ってきて、あなたの顔をひっぱたく。その時に、正しい答えを出すことができるという、3つの教訓を残している。これは、GEの社長であったジャック・ウェルチがいう、走りながら考える、と内容的には同じである。

ビジネス環境の変化が、ますます速くなる現代では、議論しつくして出した答えが、環境に適応できず、解決策として使用できないこともありえる。重要なことは、考え抜いた解決策であっても、間違っていたら、修正する勇気をもつことである。人間がやることである以上、完璧なものはない。ダーウィンが言うように、生き残る種は、頭のよい種でもなく、力のある種でもない。環境に適応できる能力が一番高い種が生き残る。ビジネスでも、同じことが言える。磐石な経営基盤をもつ、大企業といえども、環境の変化に適用できなければ、市場から淘汰される。

Friday, September 28, 2012

No. 99: 空海を覚えているか?(September 29, 2012)

Management:
日本と中国の関係が、いよいよ深刻になってきた。ナショナリズムが激高すると、時間とともに鎮静化を待つしかない。経済関係を考慮して、時間とともに、不安定な状態も、いつかは落ち着くものである。フォークランド紛争で、英国とアルゼンチンの関係に緊張が走ったが、現在でも、両国がいがみ合っているわけではない。世界の歴史とは、このようなナショナリズムの対決の歴史といっても過言ではない。対決の歴史を見ずして、友愛を追い求めた日本が、あまりにも脳天気であったとうことである。

政治主導という理想のもとに、世界一プライドが高いうえに儒教を基本思想とする国家に、第一級のキャリア官僚を大使として送らず、安易に民間人を大使に任命したという問題点はもっと深刻に考えてもよい。ニクソン大統領も田中首相も、自らが中国を訪問している。良くも悪くも、中国とはそういう国なのである。中国の歴史を見れば、第一級のキャリア官僚を送り、政府高官とのネットワークを構築すべきではなかったか。

中国行きの船が難破しかけたため、空海を含め遣唐使の一行が中国に着いたときの身なりは、ひどい身なりであった。遭難で国書も失ったため、彼らの運命は過酷であった。国の代表として来たと言っても、信じてもらえず、隔離された状態におかれてしまった。そこで、空海は、唐の皇帝あてに、自らが漢文で親書をしたためた。その親書に書かれた第一級の素晴らしい漢文をみて、役所の人間は大変におどろき、長安まで、彼らを丁重に送り届けている。つまり、見事な漢文だけで、一行が皇帝に会うに相応しい人物であることを、空海は伝えたのである。この事実は、空海の素晴らしい能力もさることながら、人物を評価する中国人のメンタリティを示しており、非常に興味深い。

ビジネスでも同じである。大企業相手の、大規模な商談やプロジェクトでは、社長あるいはそれに相応しい肩書きのある人物が行く必要がある。社長でない人物あるいはそれに相応しい肩書きのない人物が、社長から権限を与えられて来ましたと、相手企業の社長クラスの人物に挨拶するようでは、商談やプロジェクトがまとまる可能性はない。

かつて、クライスラー再建の立役者である、リー・アイアコッカは、大統領選挙に出て欲しいという誘いに、「ビジネスと政治は違う」と、一言のもとに依頼を断っている。外交とは、国と国の国益のぶつかり合いである。安易に、自国の政治姿勢だけで、動くものではない。政治もビジネスも、相手があってはじめて成立するものである。

No. 98: 消費者にアピールする値引き方法は?(September 29, 2012)

Marketing:
ネット社会になってクーポンの氾濫。はたして、どれくらい販促の役に立っているだろうか。これだけ氾濫すると、消費者の立場から見ると、クーポンの値引き分をあらかじめ計算して、価格を決定しているのではないかと思ってしまう。まして、割り引きが、パーセントで表示されていると、なおさらその気持ちが強くなる。消費者の心理を読むのは、難しいものである。

米国ミネソタ大学の研究チームが、消費者の値引きにたいする反応を調査している。つまり、価格を変更せずに容量を大きくした場合と、容量を変更せずに価格を下げた場合とを比較している。その結果、消費者は圧倒的に前者を選んでいる。

例えば、100gで1,000円の商品を、150gに増量して1,000円で販売すると、1g当たりの商品単価は、10円から6.7円になる。そして、同じ1g当りの商品単価にするには、商品を33%値引きして、100gを670円で販売することが必要である。この場合、圧倒的多数の消費者が前者を選び、増量分を得したと感じる。実験結果では、前者の戦略を取ると、売り上げが73%増加している。つまり、消費者の五感に訴えた方がより効果がある。つまり、50gの増量と、330円の値引きでは、50gの増力の方が、消費者にアピールする。これは、50330の数字がもたらす、簡潔さと関連している。

さらに、一度に40%の値引きを提示するよりも、20%の値引きを提示して、さらに、定価の80%になった商品を、さらに25%値引きして、合計で40%の値引きをして、定価の60%で商品を販売するほうが効果があるという調査結果になっている。つまり、値引きを二段階に分けると、よりインパクトが強くなるというこである。この場合も、数字は簡潔であるほうがよい。

数字の計算が大好きな人物は別として、一般の消費者は、買い物をするのに、あまり細かい計算はできないし、やりたくないものである。例えば、車の燃費が向上したことを、消費者に訴えるのに、燃費が何パーセント向上して、リッター当たりの走行距離が27 km になったというのと、1リッター当たりの走行距離が、25 km から27 km になりましたと広告する場合とでは、消費者の記憶に残る数字は、明らかに、25 km から27 kmである。

現代社会は、数字の氾濫で、全員が数字の解釈に苦労している。消費者は買い物に、簡潔なメッセージと簡潔な数字を求めるのも、当然といえる。

No. 97: 東南アジア市場での、競争はさらに激化する。決め手はマーケティング (September 28, 2012)

Marketing:
味の素やキッコーマン等の、食品大手がアジア市場の開拓を本格化させる。現地のニーズにあった商品戦略で、拡大する中間層の需要を掘り起こす。食の高級化がすすむ東南アジアの市場は、プロクター・ギャンブル (P&G) とユニリーバの欧米メーカーの存在が大きく、これから激しい戦いが予想される。この欧米二強の動きを観察すると、日本企業のアジア市場拡大のヒントが見えてくる。

P&Gとユニリーバはアジア市場では、長年のライバル関係にある。中国ではP&Gがマーケットリダーであり、インドでは、ユニリーバがP&Gを抑えている。中国と違ってインドでは、まだ量販店チェーンが発達しておらず、個人商店が多いうえに、インターネットの普及も低い。そのため、ユニリーバを追いかけるため、P&Gは地道な努力をしている。例えば、政府の許可を得て、学校に行き、生徒に石けんで手を洗うことや、歯磨きの習慣を根付かせるプログラムを実行している。

両社は、インド市場を、三つのクラスに分けている。つまり、欧米と同じブランド商品を購入できる富裕層、急速に人口が増加する中間層、そして、ブランド商品を購入したことがない階級層の三つの層に分解している。P&Gは、富裕層でない消費者にも買える商品開発について、ユニリーバに対抗できていない。つまり、小さな容器に入れて、販売するという戦略で、ユニリーバに遅れを取っている。つまり、米国市場の発想では、一個20セント以下で商品を売るというアイデアが思いつかないのである。しかし、小袋で販売するという戦略は非常に重要である。事実、インドネシアでは、ユニリーバの売り上げの三分の一が、単価が20セント以下である。

これは、歴史から見ると、英国企業とオランダ企業が合併してできたユニリーバと、米国という巨大市場で、世界一のヘルスケアー企業となったP&Gの違いといえる。特に、P&Gは、本社のシンシナティを中心にした統合システムで有名である。両者とも、素晴らしい研究開発力を有しているので、商品にはそんなに差はない。やはり決めては、マーケティングということになる。いくら本社で戦略を練り上げても、現地の状況に即していないと、まったく役に立たない。

リンスあるいはかゆみ止めも可能なシャンプーを売るよりも、まずシャンプーする回数を増やすことが必要だとすれば、下水道等の社会インフラの面からも市場を観察する必要がある。日本企業が、商品を小袋にいれて小額単位で販売する戦略は100%正しい。しかし、社会インフラを考慮にいれて、地道に努力するという時間がかかるが、これしかないという戦略を地道に実行することが重要である。

Sunday, September 9, 2012

No. 96: 分からないビジネスには手を出さない (September 10, 2012)

Management:
焼肉店チェーンで、最大手の「牛角」を含め、全国で約1,200店の外食店を経営するレックス・ホールディングスが居酒屋最大手のコロワイドに買収されることになった。焼肉店チェーンという、今までにないコンセプトを確立して、急成長したレックス・ホールディングは、事業拡張のためコンビニエンスストアやスーパーマーケットの経営に乗り出した。新しく進出した二つのビジネスが、上手く行かず、多額の負債を抱え込み、さらに本業も経営不振の状態が続き、結局、他社に買収されることなった。

この事例は、経営者が分からないビジネスには、手を出してはいけないという教訓を与えている。外食店チェーンの経営と、コンビニエンスストアの経営、スーパーマーケットの経営は、それぞれまったく別のビジネスである。しかも、コンビニエンスストアやスーパーマーケットのビジネスが、本業の焼肉店チェーンビジネスに、シナジー効果をほとんどもたらさない。これは、落ち着いて考えると、容易に理解できるはずである。大手スーパーマーケットが経営する外食ビジネスでも、外食市場での存在感が低いという事実を考えると、資本力のない中堅企業が、絶対的に数の論理がものをいう、チェーン店ビジネスで、3分野も同時に追い求めることは不可能である。

焼肉店チェーンという新しいコンセプトを確立し、優良企業として、外食産業の先頭を走っていたのに、本質的にまったく違うビジネスに手を出すべきではなかった。ステーキと違って、焼肉は、日本が生んだ固有の文化である。食の高級化が猛スピードで進む、中国をはじめとするアジアの諸国へ進出すれば、素晴らしいビジネスが展開できたはずである。世界の食通にとって、日本の食材で一番印象に残るのは、焼肉あるいは焼き鳥に必要な「たれ」である。単純にソースと英訳してしまうと、「たれ」のもつ本来の意味が失われるくらいに、奥深い文化なのである。

富士重工は、車の走行性能を重視するファンに的を絞って、車を開発しマーケティングをしている。トヨタや日産との競合をさけて、ひたすら、車好きのための車に焦点を当てている。事実、日本で考える以上に、北米では、スバルの人気は高く、スバリストと呼ばれるファンが存在する。どんな大企業でも、資金を含む経営資源には限りがある。グローバルな競争が、ますます激しくなっていく現状をみれば、経営資源の最適配分が、ますます重要になってくる。